弊社のサーフボードブランドには、それぞれのストーリが必ずあります。オーナーの栗田は、ただ有名だから・新しいからと言ってサーフボードブランドの販売を決めるわけではありません。それぞれのブランドと、弊社には必ずキーとなる出会いがあります。
例えばですが、XTR素材との出会い、Hydro Flex素材との出会い、Robertsとの出会い、Rustyとの出会い、Sean Mattisonとの出会い・・・などなどすべてのブランドとの直接的な関係があります。
それぞれ形は違いますが、自分にとって強烈な印象でそのブランドのDNAがまるで自分の中に書き込まれるような体験です。だから、何年も前となったことであってもすべて鮮明に頭の中の映像として覚えています。
その中でも、今注目のDaniel ThomsonのTOMOサーフボードとの出会い(NO1編)を書きました。
【弊社XTRサーフボードJapanのオーナーの栗田が何故Daniel “TOMO” Thomson“のボードを皆様にお勧めするか】
Daniel “TOMO“ Thomson。今こそあのKelly Slater Designを手掛け、世界でも最も注目されるシェイパーの一人です。以前はボロ車に乗り、いつかの成功を夢見て、オーストラリアから、新しいシェイプ理論を学ぶためにカリフォルニアへ来た若い青年でした。
彼と初めて会ったのは栗田が、XTRサーフボード Japanを本格的に日本で立ち上げるための準備で、カリフォルニアに住んでいた時の事です。彼とは、あるサーフボードの展示会で会いました。
Danielは、当時としてはあまり見たことの無いサーフボードデザインをサンディエゴでの展示会に出品していたのです。その飾り気のないブースは、今考えるとある意味彼のモノづくりの姿勢を表しているようでした。
彼は、
“サーフボードの機能性を重視して、いらない部位はサーフボードに出来るだけ入れない”
というポリシーを持っています。今でさえ、コンペティティブサーフィンのジャッジに受けるように、WSL用(例えばStu Kennedy用のボード)のボードにはノーズエリアを入れているモデルを出していますが、彼を本当の意味で有名にしたデザインはあのカットオフボードデザインです。
豪華な机や受付エリアなどはありません。ボードが無骨に床に置かれているだけです。そして壁には彼のボードのバナーフラッグが2 枚。そして片隅に置かれた椅子は、彼が当時に乗っていたミニバンのイスを1個取り外しているものでした。
まるでスタイルや見た目は全く関係無い。とにかく自分の個性あるデザインに自信があるので、それを見て欲しいと言っているようです。
これには自分も共感をしました。というのは、弊社も同じように商品に自信がありますが、広告などで自社商品を過剰に演出することは一切ありません。また、店舗も商品の性能を含む質やその量には自信はありますが、豪華な演出はしておらず、サーフボードを保護管理する場所以外は、個別のお客様に安心してアドバイスできる&安全にボードをお渡しするスペースの確保を最優先としていて、必要最低限の機能しかありません。
Danielからボードの説明を聞くと、
”AUS出身なんだが、自分自身は小さいころからコンペ志向のスラスターボードばっかり乗ってきた。自分の父がシェイパーだったし、自分もシェイプをしていた。新しいデザインを手掛けている今は想像できないかもしれないけど、自分は
”超コンペ志向サーファー“
だった。
だけど、それをずっと続けていると、サーフィンの本当の楽しみはこれじゃないと感じてきた。
通常のポイントノーズのスラスターは、どんなボードでも同じような性質を持つ。多少はモデルごとに変わるかもしれないが、乗っていて動きはすぐに予想出来るし、そして乗るために乗り手が苦労しなければならない(つまりボードをPushしてスピードを出す必要がある)。本当につまらない。
そんなショートボードに乗っていて、コンペとか他人に見せるサーフィンに飽き飽きしてきた。そして気づいたんだ。自分で楽しむのがサーフィンの本当な喜びなのに、見た目とか、他人との比較とか、カッコとかにこだわるコンペサーフィン。。これは自分がやりたいサーフィンじゃない。もうサーフィンがつまらなくなってしまったんだ。
だから、自分で新しいデザインを手掛けることにした。
と言っていました。そんな彼のセオリーをまとめると
・より直線的なアウトライン=スピード&ドライブ
・より短いボード=タイトなターン
・最小限のフォームで、最大のウエーブキャッチ能力を
・フィンやテールシェイプ・ボトムコンケーブを操り、更なるドライブを出す
・素材も従来素材ではなく、よりスピード・反応・繊細な動きが出来る素材
ということでした。
彼のシェイプは、すべてはアウトラインから始まります。そしてより直線的なアウトラインこそが、最小のフォーム(ボードの容積)で最大のスピードを出せるのです。いわば、直線的なアウトラインがより効率的にサーフボードの容積・接水面を、スピードに変換するというデザインとなります。
この直線的なアウトラインとは、通常のボードより幅広なボードを意味しません。通常のボードよりも細いセンター幅でも、直線的なアウトラインがスピードをより高めるのだと考えたのです。
アウトラインが直線的だと、ターンがし難いという人がいます。そう、そのとおりなのです。だから、Danielがシェイプするボードは短くて・幅が比較的狭いのです。そうすることによって、ターンの性能を確保しています。短いボード=より波にフィットしたボードとなるのです。
より直線的なアウトラインと短めのデザインを合わせることにより、ハードなレールターンをパワーを持って行えます。カービーアウトライン(曲線の多い)のボードだと、レールを入れるのは簡単ですが、スピードをキープするのには技術が必要です。だから、プロは別として一般サーファーが楽しむためにベストではありません。
よりスピードを出すには、フィンやテールシェイプ・ボトムコンケーブも重要です。もちろん、最高のデザインから、最大限のスピードや反応を出す素材も要点であることは間違いありません。
一般のサーファー(プロも含め)が水の中で”Best Time”を得るには、カービーなアウトラインでは無く、直線的なアウトライン+短め+最新素材がベストな組み合わせなのです。
そんな彼の話を聞いて、作り話だったらサーフボードデザインの考え方に、一気に共感するところですが、筆者の反応はその時は
”ふーんそんな考え方もあるんだ“
程度でした。
当時自分は、技術は劣るながらも、カリフォルニアのアマチュアーのツアーに参加するくらいコンペは嫌いではありませんでした。とにかくサーフボードは動き重視、浮力で劣る分はパドルは毎日海に入ることで鍛えて、体重管理もばっちり・・・とにかくバシバシとリップを当てて、うまくなりたいいんだ。なんて、今では考えられないサーフボードの嗜好です。
もちろん丸目のサーフボードは持っていましたが、好きなボードのデザインはいわば典型的なパフォーマンスショートボードです。
現在とは
“サーフィンがうまくなる“
というベクトルが全く異なっていたのが、思い起こせば思い起こすほど良くわかります。毎日自分の思うようにほぼ時間を使えて、そしてパーソナルライフや仕事などを今ほど考えなくても良いという(つまり若かった)こともあったでしょう。
そして状況も変化した今は、
“うまくなる=あてこみをして激しいサーフィンする“
から、
”うまくなる=それぞれのサーフボードの特性を楽しみながら、どんな波でもサーフィンの醍醐味を味わえるようにする“
という方向に変わってきました。
つまりこの変化は、私が多くのカリフォルニアシェイパーで、サーフィンを心から愛するシェイパー達から教わって影響を受けた
”世界のベストサーファーは、サーフィンを一番楽しんでいるサーファーだ”
という教えがもたらしてくれたものです。
現在は、年齢さえ重ねて以前のような体力はありませんが、今までのサーフィンライフの中で一番サーフィンが楽しく感じられます。そしてこれからも、更にサーフィンが楽しくなるとも思っています。何故ならば、本当にサーフィンを楽しむために
”自分はどうすれば良いか”
が分かったからです。それはサーフブレイク選びから始り、サーフィンをする時間、そして波を読む力や、そしてサーフボードチョイスを自分に合わせてチョイスが出来るようになったからとも言ってよいでしょう。
そんなサーフボードチョイスの一つに、TOMOボードが加わっています。このボードを体感しているのとそうではなかった場合の自分のサーフィンライフの深みの違いは、言葉だけでは語りつくせないほど豊かなものなのです。
ですが、当時はボードは個性があるなという感じはしましたが、敢えてオーダーしようとは思いませんでした。まず自分が乗って愛せるもの出ないと、弊社のお客様にはお勧めできないので、その時にオーダーをしなかった私のボード紹介選択には入りませんでした。
やっぱりサーフボードは尖ってなんぼ?という感じだったかどうかは覚えてはいませんが、いずれにせよその展示会での出会いはここまでです。
次回に彼のボードに出会ったのは、XTRサーフボードファクトリーのEpoxy Proとなります。たまたま、その時にHydrodynamicaの主宰である、Richard KenvinさんがEpoxy Proへ来ていて彼の話を聞きました。Danielと出会ってから1年後くらいでしょうか?
To be continued....
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